IFRS中小企業版 第1章中小企業

今回は中小企業の意義について説明します。

 IFRS中小企業版とは?

 中小企業向けに適用されるIFRSといえます。IFRSは主に:PIEs (Public Interest Entities)と呼ばれる大きな社会的利害関係を有する企業を対象としていることから、その内容が細かく区分され、極めて詳細な記述がなされていることから、一般の企業が普段の取引において参考とすることには適しません。そこで、一般の企業向けにIFRS中小企業版が作成されており、会計制度全体の包括的理解という意味でより実務的といえ、かつ、正式なIFRSとも大きな相違はないものとなっています。

中小企業とは?

以下の2つの条件を同時に満たす企業をいいます。

①公的説明責任を有しない。

②外部利用者に財務諸表を公表している。

①公的説明責任

以下のような責任をいうものとされています。

(a) 企業の負債性金融商品又は資本性金融商品が公開市場で取引されているか又は公開市場での当該金融商品の発行の過程にある場合:又は

(b) 自己の主要事業の一つとして、外部者の広範なグループの受託者として資産を保持している場合(例えば、銀行、信用組合、保険会社、証券ブローカー・ディーラー、投資信託会社及び投資銀行等)。

 ②外部利用者

例えば、事業経営に関与していない事業主、現在の及び潜在的な債権者、並びに格付機関が含まれるものとされています。

 

 

 

IFRS中小企業版

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IFRS中小企業版の実務的活用の可能性について考えるとともにその内容についてみてみたいと思います。

 

IFRS中小企業版の全体の章立て

第1章 中小企業

第2章 概念及び全般的な原則

第3章 財務諸表の表示

第4章 財政状態計算書

第5章 包括利益計算書及び純損益計算書

第6章 持分変動計算書並びに純損益及び剰余金計算書

第7章 キャッシュ・フロー計算書

第8章 財務諸表の注記

第9章 連結及び個別財務諸表

第10章 会計方針、見積り及び誤謬

第11章 基礎的金融商品

第12章 その他の金融商品に関する事項

第13章 棚卸資産

第14章 関連会社に対する投資

第15章 ジョイント・ベンチャーに対する投資

第16章 投資不動産

第17章 有形固定資産

第18章 のれん以外の無形資産

第19章 企業結合及びのれん

第20章 リース

第21章 引当金及び偶発事象

第22章 負債及び資本

第23章 収益

第24章 政府補助金

第25章 借入コスト

第26章 株式に基づく報酬

第27章 資産の減損

第28章 従業員給付

第29章 法人所得税

第30章 外貨換算

第31章 超インフレ

第32章 後発事象

第33章 関連当事者についての開示

第34章 専門的活動

第35章 「中小企業向けIFRS」への移行

 

 

今回の章立て

 

I. IFRSとは?

IFRS国際財務報告基準:International Financial Reporting Standards)とは、ロンドンに本部を置く民間の会計基準設定主体である国際会計基準審議会(IASB)およびIASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)により設定された会計基準(IASおよびIFRS)およびIFRS解釈指針委員会(IFRIC)およびIFRICの前身である解釈指針委員会(SIC)により発表された解釈指針(SICsおよびIFRICs)の総称です。このうち会計基準については、財務諸表の作成および表示に関する概念フレームワークが含まれます。

 

II. IFRS pros and cons

IFRSの長所は世界共通で利用できることにあります。複数国にまたがる事業を管理する場合に、自ら採用する基準を中心に判断、議論ができることは代えがたいものがあります。

現在、IFRSは世界156の国/地域において会計基準としてが要請または認められています。後述するIFRS中小企業版(IFRS for SMEs)についても、世界86の国/地域において採用が認められています。

 

III. IFRSと日本会計制度

(1) 日本では認められていない?

 IFRSは日本では基準として採用することは認められていません。

 

(2) そもそも日本の会計制度って?

公正なる会計慣行

日本の会計は、一般に公正妥当と認められる「公正なる会計慣行」を規範とすると表現されます。会計慣行は、すべての会社に適用を求める規範性があるのですが、そもそも強制力はありません。しかし、一定規模以上の会社に関しては、事実上の強制力を持って、会社決算で公正なる会計慣行を適用するということになります。このような規範をソフトローと呼びます。

 

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準

この慣行を支えるものとして、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準があり、以下のようなものが含まれるとされています。

1.企業会計審議会又は企業会計基準委員会から公表された会計基準

2.企業会計基準委員会から公表された企業会計適用指針及び実務対応報告

3.日本公認会計士協会から公表された会計制度委員会等の実務指針及びQ&A

4.一般に認められる会計実務慣行

なお、明確な企業会計の基準がない場合等、監査人が、経営者が採用した会計方針及びその適用方法をはじめ財務諸表の適正性に関する判断を行うに当たり、実務の参考になるものとしては、例えば次のものがあるとされます。

日本公認会計士協会の委員会研究報告(会計に関するもの)

・国際的に認められた会計基準

・税法(法人税法等の規定のうち会計上も妥当と認められるもの)

・会計に関する権威のある文献

 

参考:会計トライアングル

企業会計に係る法制として金融商品取引法会社法法人税法があるといわれます。

金融商品取引法(上場会社等に適用)

第百九十三条

この法律の規定により提出される貸借対照表損益計算書その他の財務計算に関する書類は、内閣総理大臣が一般に公正妥当であると認められるところに従って内閣府令で定める用語、様式及び作成方法により、これを作成しなければならない。

(財務諸表等規則の第一条第二項には、「企業会計審議会」により公表された企業会計の基準が、同条第三項には、「企業会計基準委員会」により公表された企業会計の基準が公正なる会計慣行となることが示されている。)

会社法(全ての会社に適用)

第四百三十一条

株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

法人税法 (税額の計算を目的として全ての会社に適用)

第二十二条

4 第二頄に規定する当該事業年度の収益の額及び前頄各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。

 

(3) 日本におけるIFRSの利用は認められる?

会計慣行において基準とは唯一絶対的なものではなく、一定の幅が認められます。

さらに、IFRSは絶対的な基準としては認められないものの、会計慣行として考慮されるものといえ、むしろ近づいて行っているといえるでしょう。

従って、会計慣行として実施することは問題ないものといえ、最終的に必要に応じて修正することにより真実性の確保等の目的を達するものともいえるでしょう。

 

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IFRS 章立て

 

第14次五カ年計画

第14次五カ年計画

 中国において2021~25年にかけての経済運営方針を示す計画。

 五カ年計画は、1928年にソビエト連邦スターリンが指導した社会主義国家建設計画。 1928年から1932年の間、急激な重工業化と農村集団化が強行された。

 

 中国においては、ソビエト連邦に倣って1953年に最初の五カ年計画が作成され、2021~25年における計画で第14回目となる。

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第14次五か年計画

 

未来の雇用 AIへの課税?

未来の雇用 未来の税収

 2013年にオックスフォード大学のオズボーン博士とフライ研究員によって「未来の雇用」レポートが発表されて以降、日本においても、近い将来ほぼ全ての職種においてAIにより雇用が奪われることになるのではとの議論がなされています。

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未来の雇用

 それでは、このAIによる雇用の消失(の可能性)は、租税の分野ではどのように捉えられているのでしょうか?

 以下の図にみられるように、多くの国において税収の主要な項目の一つとして、その収入を個人に対する所得税に依存しいています。

 

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所得税割合

 米国では税収総額の53%、日本でも31%が個人に対する所得税から賄われており、現実には、これに社会保険収入を加えた場合、3分の2以上の国家収入が個人の就業機会を通して賄われているといえるでしょう。

 このような状況のもと、もし、AIにより多くの職業が失われることとなれば、まさに社会の根幹を揺るがす問題となりかねません。そこで、欧米を中心に、租税学者、AI専門家等の間で以下のような議論が活発になされています。

 

AIに対す課税、税からの解放?

 AIを自然人、法人に次ぐ第3の納税主体とすることへの可能性が議論されています。

 まず、今では当然と考えられている法人に対する課税の歴史を見てみましょう。

 アメリカでは、1894年までは事業の所有者個人には課税がなされていたものの、法人自体には課税が行われていませんでした。

 また、日本においても、明治20(1887)年に所得税法が創設された時は法人の所得は所得税の課税の対象外でした。明治32(1899)年に入り、法人の所得にも所得税が課税されるようになっています。

 このように数千年という課税の歴史のなか、法人が納税主体とされてからは、まだ100年程度しか経ていないことを考えれば、AIに対する課税も決して突拍子もない話ではないと考えられるかもしれません。

 

 さらに具体的には、以下のような内容が議論されています。

①AI使用者による納税

 税金を支払う経済的能力(担税力)は、AIを使用することによって、そうでなければ課税されていたであろう給与または他の報酬を節約するAI使用者または所有者に帰するべきであり、これらのものを通して納税が行われるという考え方。

②AIによる納税

 技術的にAIに担税力を割り当てることが可能となった場合、何らかの基準により、AIに直接課税を行うということが可能となるという考え方。 

③VATの適用

 サービス消費の段階で課税を行う方法。但し、AIが人間によるサービス提供のサポートをする場合に、一種の中間消費をどのように区分するかについての問題が指摘されています。

 

 いずれの場合においても、この問題は特定の州または国境をはるかに超えています。従って、OECDや国連レベルでの国際課税の最近の進展も考慮に入れつつ、グローバルに分析及び議論されなければならないことが指摘されています。

 

  アメリカ合衆国建国の父の一人として讃えられ100ドル札のモデルともなっているベンジャミン・フランクリンは次のような言葉を残しています。

 In this world nothing can be said to be certain, except death and taxes.

(この世には決して逃れられないものがある。それは、死と税金だ。)

  果たして、人類は、ついに税金という足かせから逃れることができるのでしょうか?

 

帰属主義に基づく内国法人に対する課税

 

国外PE所得にかかわる取扱い

日本の所得税法及び法人税法における国内源泉所得の範囲(結果として国外源泉所得)の範囲を定めるソースルールは2014年度税制改正により、従来の総合主義から帰属主義に改正されています。

ソースルールは一義的には外国法人や非居住者の国内源泉所得の範囲を確定するためのルールですが、内国法人あるいは居住者が外国税額控除の適用を受ける際の控除限度額の計算における国外所得金額を確定させる役割もあります。

改正後は国外事業所等帰属所得(「国外PE帰属所得」)とそれ以外の国外源泉所得(「PEに帰属しない国外源泉所得」)に区分して計算されることとなりました。

文書化

(国外)PE帰属所得にかかわる所得金額の計算上、外部取引から生ずる所得が(PE)に帰属する者については、その内容等を記載した文書を作成、提示することが必要とされました。

同一法人格の本店等と(国外)PEとの間の内部取引については、契約書等が当然には存在しないことから、内部取引の存否及び内容を明確にするための文書を作成、提示することが必要とされました。

 

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外国法人国内PEにかかわる帰属主義

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国外PEを有する内国法人

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古代における日本、中国、欧州における物価比較

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日本*(AD600前後)

中国(BC600前後)

アテネ(BC400前後)

貨幣価格

60束

10,000銭

3.000ドラクマ

労働力相当

2カ月

10ヶ月

100ヶ月

*日本

住宅用土地100㎡(0.1反)とした場合の土地値段100束×0.1×3年=30束

古代日本においては一般に住宅の所有や賃貸は行われておらず、ひかくのための想定計算。

出典:

「漢簡中的河西經濟生活」、『歴史語言研究所集刊十一本』、「居延漢簡と漢代の財産税」、『立命館大學人文科學研究所紀要一號』、『宮崎市定全集』、「史記貨殖伝物価考証」、「Economy and Economics of Ancient Grace」、「中世の借金事情」、「論説 古代の土地売買について」

国際税務:IRSによるマイクロキャプティブ使用の取り締まり継続

 米国内国歳入庁(IRS)は、マイクロキャプティブ保険取引に参加した納税者に対して、第2ラウンドの期限付き解消案を発表しました。

 マイクロキャプティブ保険制度により、年収が235万米ドル未満の特定の企業(2020税年度のインフレ調整後)は、さまざまな特定リスクに対して自己保険をかけ、セクション831(b)に基づいて支払われた保険料を差し引くことができます。