未来の雇用 AIへの課税?

未来の雇用 未来の税収

 2013年にオックスフォード大学のオズボーン博士とフライ研究員によって「未来の雇用」レポートが発表されて以降、日本においても、近い将来ほぼ全ての職種においてAIにより雇用が奪われることになるのではとの議論がなされています。

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未来の雇用

 それでは、このAIによる雇用の消失(の可能性)は、租税の分野ではどのように捉えられているのでしょうか?

 以下の図にみられるように、多くの国において税収の主要な項目の一つとして、その収入を個人に対する所得税に依存しいています。

 

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所得税割合

 米国では税収総額の53%、日本でも31%が個人に対する所得税から賄われており、現実には、これに社会保険収入を加えた場合、3分の2以上の国家収入が個人の就業機会を通して賄われているといえるでしょう。

 このような状況のもと、もし、AIにより多くの職業が失われることとなれば、まさに社会の根幹を揺るがす問題となりかねません。そこで、欧米を中心に、租税学者、AI専門家等の間で以下のような議論が活発になされています。

 

AIに対す課税、税からの解放?

 AIを自然人、法人に次ぐ第3の納税主体とすることへの可能性が議論されています。

 まず、今では当然と考えられている法人に対する課税の歴史を見てみましょう。

 アメリカでは、1894年までは事業の所有者個人には課税がなされていたものの、法人自体には課税が行われていませんでした。

 また、日本においても、明治20(1887)年に所得税法が創設された時は法人の所得は所得税の課税の対象外でした。明治32(1899)年に入り、法人の所得にも所得税が課税されるようになっています。

 このように数千年という課税の歴史のなか、法人が納税主体とされてからは、まだ100年程度しか経ていないことを考えれば、AIに対する課税も決して突拍子もない話ではないと考えられるかもしれません。

 

 さらに具体的には、以下のような内容が議論されています。

①AI使用者による納税

 税金を支払う経済的能力(担税力)は、AIを使用することによって、そうでなければ課税されていたであろう給与または他の報酬を節約するAI使用者または所有者に帰するべきであり、これらのものを通して納税が行われるという考え方。

②AIによる納税

 技術的にAIに担税力を割り当てることが可能となった場合、何らかの基準により、AIに直接課税を行うということが可能となるという考え方。 

③VATの適用

 サービス消費の段階で課税を行う方法。但し、AIが人間によるサービス提供のサポートをする場合に、一種の中間消費をどのように区分するかについての問題が指摘されています。

 

 いずれの場合においても、この問題は特定の州または国境をはるかに超えています。従って、OECDや国連レベルでの国際課税の最近の進展も考慮に入れつつ、グローバルに分析及び議論されなければならないことが指摘されています。

 

  アメリカ合衆国建国の父の一人として讃えられ100ドル札のモデルともなっているベンジャミン・フランクリンは次のような言葉を残しています。

 In this world nothing can be said to be certain, except death and taxes.

(この世には決して逃れられないものがある。それは、死と税金だ。)

  果たして、人類は、ついに税金という足かせから逃れることができるのでしょうか?