IFRS中小企業版

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IFRS中小企業版の実務的活用の可能性について考えるとともにその内容についてみてみたいと思います。

 

IFRS中小企業版の全体の章立て

第1章 中小企業

第2章 概念及び全般的な原則

第3章 財務諸表の表示

第4章 財政状態計算書

第5章 包括利益計算書及び純損益計算書

第6章 持分変動計算書並びに純損益及び剰余金計算書

第7章 キャッシュ・フロー計算書

第8章 財務諸表の注記

第9章 連結及び個別財務諸表

第10章 会計方針、見積り及び誤謬

第11章 基礎的金融商品

第12章 その他の金融商品に関する事項

第13章 棚卸資産

第14章 関連会社に対する投資

第15章 ジョイント・ベンチャーに対する投資

第16章 投資不動産

第17章 有形固定資産

第18章 のれん以外の無形資産

第19章 企業結合及びのれん

第20章 リース

第21章 引当金及び偶発事象

第22章 負債及び資本

第23章 収益

第24章 政府補助金

第25章 借入コスト

第26章 株式に基づく報酬

第27章 資産の減損

第28章 従業員給付

第29章 法人所得税

第30章 外貨換算

第31章 超インフレ

第32章 後発事象

第33章 関連当事者についての開示

第34章 専門的活動

第35章 「中小企業向けIFRS」への移行

 

 

今回の章立て

 

I. IFRSとは?

IFRS国際財務報告基準:International Financial Reporting Standards)とは、ロンドンに本部を置く民間の会計基準設定主体である国際会計基準審議会(IASB)およびIASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)により設定された会計基準(IASおよびIFRS)およびIFRS解釈指針委員会(IFRIC)およびIFRICの前身である解釈指針委員会(SIC)により発表された解釈指針(SICsおよびIFRICs)の総称です。このうち会計基準については、財務諸表の作成および表示に関する概念フレームワークが含まれます。

 

II. IFRS pros and cons

IFRSの長所は世界共通で利用できることにあります。複数国にまたがる事業を管理する場合に、自ら採用する基準を中心に判断、議論ができることは代えがたいものがあります。

現在、IFRSは世界156の国/地域において会計基準としてが要請または認められています。後述するIFRS中小企業版(IFRS for SMEs)についても、世界86の国/地域において採用が認められています。

 

III. IFRSと日本会計制度

(1) 日本では認められていない?

 IFRSは日本では基準として採用することは認められていません。

 

(2) そもそも日本の会計制度って?

公正なる会計慣行

日本の会計は、一般に公正妥当と認められる「公正なる会計慣行」を規範とすると表現されます。会計慣行は、すべての会社に適用を求める規範性があるのですが、そもそも強制力はありません。しかし、一定規模以上の会社に関しては、事実上の強制力を持って、会社決算で公正なる会計慣行を適用するということになります。このような規範をソフトローと呼びます。

 

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準

この慣行を支えるものとして、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準があり、以下のようなものが含まれるとされています。

1.企業会計審議会又は企業会計基準委員会から公表された会計基準

2.企業会計基準委員会から公表された企業会計適用指針及び実務対応報告

3.日本公認会計士協会から公表された会計制度委員会等の実務指針及びQ&A

4.一般に認められる会計実務慣行

なお、明確な企業会計の基準がない場合等、監査人が、経営者が採用した会計方針及びその適用方法をはじめ財務諸表の適正性に関する判断を行うに当たり、実務の参考になるものとしては、例えば次のものがあるとされます。

日本公認会計士協会の委員会研究報告(会計に関するもの)

・国際的に認められた会計基準

・税法(法人税法等の規定のうち会計上も妥当と認められるもの)

・会計に関する権威のある文献

 

参考:会計トライアングル

企業会計に係る法制として金融商品取引法会社法法人税法があるといわれます。

金融商品取引法(上場会社等に適用)

第百九十三条

この法律の規定により提出される貸借対照表損益計算書その他の財務計算に関する書類は、内閣総理大臣が一般に公正妥当であると認められるところに従って内閣府令で定める用語、様式及び作成方法により、これを作成しなければならない。

(財務諸表等規則の第一条第二項には、「企業会計審議会」により公表された企業会計の基準が、同条第三項には、「企業会計基準委員会」により公表された企業会計の基準が公正なる会計慣行となることが示されている。)

会社法(全ての会社に適用)

第四百三十一条

株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

法人税法 (税額の計算を目的として全ての会社に適用)

第二十二条

4 第二頄に規定する当該事業年度の収益の額及び前頄各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。

 

(3) 日本におけるIFRSの利用は認められる?

会計慣行において基準とは唯一絶対的なものではなく、一定の幅が認められます。

さらに、IFRSは絶対的な基準としては認められないものの、会計慣行として考慮されるものといえ、むしろ近づいて行っているといえるでしょう。

従って、会計慣行として実施することは問題ないものといえ、最終的に必要に応じて修正することにより真実性の確保等の目的を達するものともいえるでしょう。

 

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