IFRS中小企業版 第3章財務諸表

今回は、FRS中小企業版第3章財務諸表について、解説します。

ここでは、財務諸表の構成とその作成にあたって基礎となる事項が示されており、日本の会計においても聞きなれた項目も登場します。

財務諸表の構成

財務諸表として、財政状態計算書、包括利益計算書、持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、注記が含まれます。

IFRSでは、子会社投資を有する場合には連結財務諸表を作成することが原則とされており、この前提をもとに基準が作成されています。これについては、IFRS中小企業版第9章連結及び個別財務諸表において記述する予定です。

II.財務諸表の作成の基礎となる事項

財務諸表の作成に際する基礎として、以下のような事項が述べられています。

(1) 適正な表示

財務諸表は、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローを適正に表示しなければならない。

(2)継続企業

財務諸表の作成に際して、IFRSを採用する企業の経営者は、企業が継続企業と

して存続する能力があるかどうかを検討しなければならない。

継続企業としての存続能力に不確実性が見込まれる場合には、企業はその不確実性を開示し、さらに、財務諸表を継続企業の前提で作成していない事実、その場合の財務諸表作成の基礎、当該企業が継続企業とは認められない理由を開示しなければならない。

ここでは、経営者に当該企業の清算若しくは営業停止の意図があるか、又はそうする以外に現実的な代替案がない場合を除き、当該企業は継続企業であるものとされる。また、継続企業の前提が適切かどうかを検討する際に、将来(少なくとも報告日から12 か月)に関するすべての入手可能な情報を検討しなければならない。

(3)表示の継続性

企業は、会計方針の変更等IFRS(中小企業版)において認められる一定の場合を除いて、財務諸表上の項目の表示と分類を維持しなければならない。

(4)重要性と集約

企業は、類似した項目の重要性がある分類のそれぞれを財務諸表上で区別して表示しなければならない。また、重要性がない場合を除き、性質又は機能が異質な項目を区別して表示しなければならない。

(5)比較情報

企業は、IFRS(中小企業版)において認められる一定の場合を除いて、当期の財務諸表で表示するすべての金額について、前期に係る比較情報を開示しなければならない。

 IFRSと日本企業会計原則の関係

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IFRSと日本企業会計原則比較


日本における財務諸表の構成との比較

IFRS中小企業版財務諸表

構成要素として以下のようなものがあげられます。

①財政状態計算書

包括利益計算書

(i)単一の包括利益計算書、または、

(ii) 別個の純損益計算書及び別個の包括利益計算書。

③ 持分変動計算書

キャッシュ・フロー計算書

⑤ 注記

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財務諸表間関係図

貸借対照表以外の諸表については、それぞれ以下の科目の増減を表示したものとなっています。

また、IFRS中小企業版(及び完全版)において、包括利益計算書は純利益とその他包括利益を区分し2つの利益計算書を作成する方式と、まとめて1つの計算書類とする形式が定められています。

この中で、包括利益及びその他包括利益については、一般的に次のように定義されます。

包括利益とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。

その他包括利益とは、包括利益のうち当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)及び少数株主損益(非支配株主に帰属する当期純利益)に含まれない部分をいう。

 このような定義を消極的定義というならば、あえて誤解を恐れずに、積極的定義すれば以下のように捉えることができると考えられます。

包括利益とは、キャッシュフロー概念の導入により、従来の実現利益以外の増減が貸借対照表上の資産に反映されることになったことから、これまでの利益という概念よりも広い差額が発生することにより、これを区別する必要から発生した概念(用語)。

その他包括利益とは、資産を、その将来の経済的便益とは、企業への現金及び現金同等物流入に直接的に又は間接的に貢献する潜在能力により測定(評価)することから生じる、不安定(将来的に変動する)な差額として認識された利益

日本財務諸表

日本においては、税法、会社法金融商品取引法のそれぞれで呼び名が異なります。

・(法人税法などの)税法:決算書

会社法:計算書類等

金融商品取引法:財務諸表

税法が定める決算書

貸借対照表

損益計算書

③勘定科目内訳明細書

④株主資本等変動計算書

会社法が定める計算書類等

貸借対照表

損益計算書

③株主資本等変動計算書

④個別注記表

計算書類には含まれませんが、この他に事業報告及び附属明細書があります。

金商品取引法が定める財務諸表

貸借対照表

損益計算書

キャッシュフロー計算書

④株主資本等変動計算書

⑤附属明細表

中国においては、企業会計準則により財務諸表の構成要素として以下のように示されています。

企業会計準則が定める財務諸表

①資産負債表

②利潤表

③現金流量表

④所有者権益変動表

⑤附注